笑う時の日記

生かされも殺されもする。それが笑い。その魅力が伝われば。

THE MANZAI 2013 各グループ予選

いやあ、今年は無駄が少なかった。やっぱり自分は漫才が好き。フィクションとノンフィクションの交わりがやっぱり、一番心地良く感じられる芸能だ。全組、これを機に良い方向に向くと良いなあ。

番組は二代目尾上松也の口上や亀有ブラザーズ演奏、トレンディエンジェルのワラテンテストで相変わらず楽しく場があったまる。さあ、今年はどうなる!?

 

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規格外のガキ大将とその名脇役たちによる大きな行動~『我が愛と青春のたけし軍団』

我が愛と青春のたけし軍団

我が愛と青春のたけし軍団

ガダルカナル・タカたけし軍団の結成から今に至るまでのエピソードと、軍団の他メンバーに行ったインタビューをまとめた本。たけし軍団といえば様々な身体を張った芸で伝説を残し師匠(殿)のビートたけしに絶対服従の怖い集団というイメージがあるが、この本ではよりそのイメージの拡大と意外なギャップを知ることが出来た。

こんな事を自分みたいな若造が書いたら軍団の人やたけしを愛する人たちに怒られそうだけど、ビートたけし北野武)という人物は意外と努力家なんじゃないかという印象を持った。それは彼が全く寝ないというエピソードに付随して、彼が本を「難しい本からエロ本まで」絶対にあいている時間に何冊も読んでいるという事であったりだとか、番組や映画の打ち合わせやアイデアを自分が忘れてあとで思い出すほど沢山出すという話の記述を目にしたからだ。普通、他人がやったら努力・忍耐になるような作業を彼は寝る間も惜しんで(どちらかと言うと、そのまま元気に起きたまま)、やる彼に意外な一面を見た気がした。

勿論、期待通り馬鹿話は沢山。とにかく思うのは軍団の皆さんは今回した監修のタカ(水道橋博士も入るかな?)以外、素直で天然な悪ガキだという事。(そういう人間が多く集まったのは、たけしが唯一直接クビを宣告した話を読めば何となく分かる。)今やお笑いの学校の普及で数少ない箔がつく師弟関係と俗っぽいお笑いの伝承のようにたけし軍団はなっているけど、「そもそもちゃんと師弟関係を組んだっけ?」と振り返ったり、軍団の初期メンバーは年の差や芸歴は少しあったけどみんなゆるくまとまっていたなど、今のお笑い日常感・普通の人感(元々そういう先駆けっていう批評も出来るけど)を出してるなあと思った。そもそもたけしはインタビューで「勉強ばっかりしてたから幼少時の取り返しでガキ大将になりたかったから軍団をつくったのかも」と述べてるとおり、旧来の師弟関係の否定だけじゃなかったのかもしれない。

それでも芸名の付け方や、番組の企画はやっぱり今のテレビじゃ出来ないとんでもないものばかり。フライデー事件の話なんか、軍団のそれぞれの個性がより際立ってて笑える。だけども不謹慎なのがカラッと笑えるのは、やはり軍団の芸人としての覚悟と性格の良さが出ているからだろう。多分、編集や演出の問題なんだろうけどダウンタウンやとんねるずはやってることは軍団より過酷じゃないのに、観てて良い気持ちがしない企画があるように自分は感じる。ちゃんとしたフィクションとして届けるお笑いが本当に無くなった。だから微妙に真似されて問題になることは否めない。芸人側に全責任を押し付けるのは絶対間違っていると考えるが。その事を危惧してたけしがおっかけの女の子に話しかけて、のちにとても素敵な話になるのは泣けるので読んで確かめて欲しい。

なべやかんがこの本のインタビューでたけしの多彩さとバイタリティを死刑執行前に沢山の事をする死刑囚みたいだと述べていたが、実際に一歩間違えてたら野垂死にしていたり人を殺してもおかしくない人たちが集まって、大勢の国民を笑わしたのは不思議だ。たけしという死刑囚でガキ大将の殿が、弟子でもあり名脇役でもあり息子でもある軍団と組んで送り届けてきた映画や笑いは、償いでもあり希望でもあるのだ。
哀しい気分でジョーク - YouTube

それでも笑うし笑わせるんだ~『統合失調症がやってきた』ハウス加賀谷・松本キック

 

統合失調症がやってきた

統合失調症がやってきた

 

ハウス加賀谷は所謂東京のぶっこみ芸人の系譜(たこ八郎、江頭2:50など)に位置する芸人として『電波少年』『ボキャブラ天国』などの番組で活躍していた。しかし、ある日突然姿を消す。それは彼が統合失調症に侵されたためであった・・・・。

 『バリバラ』で久々に見せた彼らの姿(といっても過去活躍してた時は、自分はまだ幼くて薄っすらとした記憶しかないのだが)は元気そうであった。しかしその元気な姿に至るまでは、ブレイク前とブレイク後の二つの苦難があったのだ。そんな中で加賀谷のお笑いにかける情熱とキックの温かい支えがあってこそ今がある。自殺をしそうになったときにキックの送ったFAXは、粋で優しい芸人ならではの止め方で感動的だ。Amazonのトップレビューにある通り、子どもへの一番の悪影響はマンガやテレビではなく両親の不仲だ。そして偶然にも勉強を強制されてしまうのは芸人を志すきっかけとなったビートたけしとも被る。彼はたけしのインテリな毒舌とは違い、より狂気にアクションをする芸風ではあったが。

不遇な状況から表舞台でなしあがっていく原動力は負のエネルギーだったという。「ざまあみろ、散々人を病人扱いして!」というような。しかし、その矛盾に耐え切れずに今は正のエネルギーで生きる彼は本当の意味で強い。それはグループホームと閉鎖病棟の閉じた世界に留まらないくらいの。お笑い界まで空気を読むようになってしまった世の中をぶち壊して欲しい。

動くことで。笑う事で。世界は、自分は、変わる。


ボキャブラ - YouTube

笑いはきっと負けない。偉大な先人たちがいる限り。~『笑いの花伝書』滝大作

 

笑いの花伝書

笑いの花伝書

 

 笑いの花伝書

コメディー作家、演出家として古くからテレビや舞台に関わってきた著者の作品。

この著作から戦前から戦後にかけての日本・外国のコメディや喜劇(映画)の歴史や凄みが理解できる点は非常に良書だ。しかし、本人も認めている通り熱く時には共感できない暴論も述べるが、くるくる考え方も変わる。人によっては暑苦しくてたまらないだろう。

しかしそれを裏付けるエピソードがこの本に書いてある。筆者は戦争を体験しており、近所のアカが大本営帝国の発表は嘘だと天皇は人間だとの真実を述べ、実際にのちにその通りになって、茫然とする。秘密保護法で冗談じゃなく戦中の非常識な世界に近付きつつある今の日本にこのエピソードは響く。それでも、加えて駄目な人間だった彼を救ったのは笑いなのだ。笑いは本当に大きな力がある。文中にある「笑いは物事を解決する力はないが、制度の偽善を暴くことはできる」というのは確かなのだ。

ザ・ニュースペーパーのコントの話。由利徹の喜劇人としてのプライドなどの貴重なエピソード、喜劇とホラーの違いやボケとツッコミの関東関西の意味合いの違いなどの解説は非常に良いテキストだ。

ファンとして、裏方として。現場でお笑いに関わってきた著者だからこその昔の俗っぽい笑いの世界が体感できる本だ。

必要なのかは分からない。けれども。~見世物小屋 花園神社 酉の市 2013/11/15

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2013年11月15日、初めて花園神社の酉の市に行った。外見から分かる人や喋りでその気がみえるオネエ、オニイの人やヤクザ者。水商売らしい人など様々な老若男女がごった返し、屋台は沢山出て熊手を買うたび威勢のいい合いの手が繰り広げられる。今まで、近くに実家があったものに行ったことが無かったが今まで知らなかった新宿の一面を見たような気がした。この様なことに魅力を感じたのなら、玉袋筋太郎菊地成孔の著作を読むのも良いのかもしれない。

最も、本当の目的はあった。それは見世物小屋。芸能の原点であるともいえるし、今では大っぴらにメディアで扱う事なんて出来ないであろう。私はスプラッター、グロテスクなものが大の苦手だが興味があって怖いもの見たさにも近い気持ちで観に行った。

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鉄拳は王道の芸人


MUSE / EXOGENESIS PART 3 (REDEMPTION) 鉄拳 ...
九月九日㈰、NHKの昼のトーク番組『スタジオパークからこんにちは』に鉄拳が出た。現在は朝の連続ドラマ『あまちゃん』で彼はパラパラ漫画を描いているなど、どちらかというと芸人というよりアーティスト寄りの活動をしている彼だが、10年位前に『たけしの誰でもピカソ』で彼を知った身としてはやはり彼は芸人なのだなと強く感じた放送であった。

彼の芸風はいわゆるフリップ芸である。彼の達者な絵が描かれたフリップをめくりながら「こんな○○は××だ!」などと漫談をしていく。ビートたけしが今でも時折『ニュースキャスター』などの番組でみせる「こんな○○は嫌だ!」の進化系と言える。しかしそこでより強烈なインパクトを見せつけているのが彼の風貌と喋り。白塗りした顔に真ん中を刈ったヘアスタイルと特撮の怪人みたいなコスチューム。まとまらないふにゃふにゃした喋り(なんかこう、ギャー、ガビーン、あれこれダメ?とか言っちゃうくらい!)。絵がうまいのでネタの面白さや状況は理解できるが、それこそ他のフリップ芸人の方がもっとうまく出来るだろう。しかしだからこそ他のフリップ芸人とは違い、ブレイクに繋がったのだと思う。

今の芸人はネタが面白いだけ。この人だからという良さがないと聞く。それが最もよく表れているのがフリップ芸ではないか。誰が始めたのかは分からないが、よりシンプル化して模倣する芸人が増えたのは、やはりいつもここからが「悲しいとき」のネタでブレイクしてからではないか。それ以外は前述のたけしや松本人志の『一人ごっつ』での自由な大喜利も大きいかもしれない。そこから少なからず芸人をやる敷居が下がったであろう。

しかし、その結果ツッコミ目線の芸人がより増えたといえる。確信犯的にフリップに書かれた事象を捉え、笑いに変えていく様はインテリな印象を感じるものの、やはりそこからの無個性さや予定調和さや上から目線が鼻につく感じはつまらない。一般人のネット上の大喜利も面白いものとつまらないものの差が非常に大きい。まさにマキタスポーツが『一億総ツッコミ時代』で指摘していたようなことだ。 

その点、鉄拳の弱点とも取れるふにゃふにゃしたまとまらない喋りは、実は大きな強みなのだ。一応は未来の戦士だとかいう設定はあるがそれは彼のネタやふにゃふにゃした喋りで、世界観とキャラクターのあやふやさが出ると同時に見る側のハードルが極端に下がる。よって笑いやすい状況が出来るのだ。これはマギー司郎つぶやきシローに近い。最近だとスギちゃんの荒さにも近いものがあるかもしれない。河原者としてのルーツを持つ芸人は客の笑いものになると同時に愛される存在となる。その意味で鉄拳は王道の芸人だ。おぼつかないトーク、子供に泣かれる、周りを見回す、今以上に色々とおぼつかないオンバト出演時の映像。そしてネタ。周りの空気を変える存在なのであった。


【お笑い】鉄拳と あまちゃん!? 「 こんな! あまちゃんは 嫌だ!!」 - YouTube

アーティストとしても、芸人としての彼も今後大いに期待したい。

こんな○○は××だ!―鉄拳作品集

こんな○○は××だ!―鉄拳作品集


こんな○○は××だ! 2―鉄拳作品集

こんな○○は××だ! 2―鉄拳作品集


こんな○○は××だ!(3)

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鉄拳パラパラ漫画作品集 第一集 [DVD]

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ベストパフォーマンス第一夜 

九月八日㈰にMBS・TBS系で『ベストパフォーマンス』という特番の第一夜が放送された。元々、過去に二回『芸人ベストパフォーマンス』というタイトルで放送された特番を時間縮小三週連続で芸人以外の演者を入れて、放送するという番組である。

一回目はフルで見て二回目は断片的に見た。この番組は演者が時間の指定を好きに出来、一切編集によるカットがなされない。よって普段出来ないネタやカットされる部分を演者がやることが出来るのだ。後ろの液晶の演出も近未来的で面白く(今回のロバートのコントでは液晶画面に障子の戸の絵が描かれていた)、カメラのカット割りも上や下から見上げる視点があり斬新であった。なので、今回も観てみた。

 

うーーん、一時間というのもあるし演者の好き嫌いもあるけど、もう少し面白くできたのでは!?

ジャルジャルとロバートは好みの問題だから、言及はしたくない。

ただ、前の放送はバラエティに色々な演芸に富んでいたのが面白かったのだし、折角芸人の枠を外したんだから、渡辺直美(口パク物真似) / ロバート(コント) / 原口あきまさ(物真似による昔話) / AFRA(ヒューマンビートボックス) / ジャルジャル(コント)は被りが二つもあって寂しい。ジャルジャルとロバートなんてクドイところも似てるんだから。特番だから余計に・・・・。然もその後の面子を見る限り、漫才は無いみたいだ。いや、ジャングルポケットがもしかしたらあり得るけど、そんなに好きな芸人じゃない・・・・。

芸は原口あきまさが良かった。他番組でやっていた昔話のフルバージョンで、落ちの江頭2時50分の真似が最近の謝罪だったので大爆笑。とにかく芸人の数が増えたので、昔は満足いく時間が与えられていたのが今や持ち時間二、三分なんてザラなのでこういう番組は大変貴重だ。こうやって特番を続けられるという事はやはり需要があるんだろう。でも、同じ系列で似たようなコンセプトだった『演芸パレード』はどうして終わっちゃったんだろう?