笑う時の日記

生かされも殺されもする。それが笑い。その魅力が伝われば。

やっぱりお好きです! やすし・きよし 『よしもと栄光の80年代漫才』

  9月4日に小学館から『よしもと栄光の80年代漫才』と題したDVDマガジンの第一巻が出た。初回のラインナップに選ばれた漫才師は横山やすし・西川きよし

 去年くらいから彼らの漫才と横山やすしの生き様に心酔していた自分はDVDが欲しかったのだが、なかなか手頃な値段で売っていなかったので1680円の値段で五本の漫才が観れるのは嬉しかった。

彼らの漫才に触れたきっかけは国立演芸場の独演会を収録したCDを聴いたことだった。独演の舞台から生まれる雰囲気もさながら、そこから出てくる二人のノリにのった掛け合いは、今の芸人とはまた違う見事な漫才芸なのであった。 その独演会の漫才も二本収録されている。今回のシリーズは漫才ブームのきっかけになったテレビ番組『花王名人劇場』からセレクトされているのだが、独演会もテレビ放映されて映像が残っていたのだ。

 元々、彼らはテレビ・ラジオで多数のレギュラー番組を抱えて知名度があったものの、全国区のテレビで漫才が放送される機会は少なかった。それが、今回収録されている80年に放送された『花王名人劇場』の『激突!漫才新幹線』で彼らの漫才が全国区且つゴールデンタイムに放送されたことによって、彼らは漫才師として改めて一気に注目を浴び、テレビで漫才を披露する機会が増えたのであった。そして漫才ブームで他の芸人達も一気に売れ、テレビで漫才が重要なコンテンツとして取り扱われ、お笑い芸人の地位も上がったのであった。

今回、改めて彼らの漫才を観て感じたのは二人のキャラクターもさることながら、貫禄と華に溢れていた。

例えば、近年間が空いたり噛むのが笑われる対象になったが、だからこそ今の芸人はネタが面白いだけというシステマチックな状態になってしまった(芸人の数が増えて長時間のネタがテレビでやりにくい事もあるかもしれないが・・・。)だが、彼らは違う。『ああ!高校野球』というネタではきよしの「スポーツは何をやってる?」という問いに対し少しやすしが口ごもった後にパン!と膝を叩き「陸上部!!」と上手く注目に持っていく手法を使っている。決して噛んだのを指摘したりするだけがうまいリカバリーじゃないことが分かる。言葉の数も多く、より自然な話術だ。

二人の実話をも取り入れた真逆のキャラクターを生かした漫才は今見ても楽しいし和む。前科持ちでやんちゃキャラのやすしと真面目で外国人の嫁を持つきよしが、馬鹿にしあいどつきあう様から生まれるボケあいツッコミあいは乱暴でありつつも微笑ましい。決してブラックな笑いにはなっていないのだ。

薄いながらも、前田憲司という芸能史研究家による彼らのバイオグラフに触れた記事と収録されている漫才の解説に上方漫才の歴史と花王名人劇場の解説が載った小冊子がついている。中々バイオグラフは良かったものの、やすしの吉本興業解雇については触れられていなかった。字数の都合か、はたまた黒歴史にしたいのか・・・。次号は島田紳助松本竜介らしいが、果たして紳助の暴力団交際による引退については触れられるのだろうか。